ヘリコバクター・ピロリ菌とは
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃がん、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の原因となる胃の中に住み着く細菌です。
また、MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血、免疫疾患、皮膚疾患との関連をも疑われています。
日本人の感染率は高く、60歳以上の方の場合、ピロリ菌感染率は8割にものぼり、国内の感染者は約3,500万人とも言われています。
諸検査で感染が判明した場合はヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療が必要です。
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が心配な方、検査を希望される方は、京都の京都今出川 金光内科・消化器内視鏡クリニックへお越しください。
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染経路
ヘリコバクター・ピロリ菌の主な感染経路は、経口感染だと考えられています。
乳幼児期の口移しなどの行為が原因である場合、若年層でもヘリコバクター・ピロリ菌に感染している方がおられます。
ご家族やご兄弟にヘリコバクター・ピロリ菌の感染者がおられる方は、ご自身の感染の有無を把握するために早めに検査を受けて下さい。
希望される方は、京都の京都今出川 金光内科・消化器内視鏡クリニックまでお越しください。
ヘリコバクター・ピロリ菌と病気
ヘリコバクター・ピロリ菌は、以下の病気の原因となります。
慢性胃炎
胃の中のヘリコバクター・ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を産生して自身の周囲の胃酸を中和することにより存在しています。
ヘリコバクター・ピロリ菌が胃の中に存在していると慢性的な炎症が引き起こされます。胃酸を分泌する細胞が減少し、胃粘膜が薄く痩せていく「萎縮性胃炎」が起こると胃液の分泌量が低下し、胃もたれなど胃の不快な症状の原因となります。また、発がんのリスクが高い「鳥肌胃炎」や、胃粘膜の萎縮が進み続けた結果、胃の細胞が腸の細胞に置き換わる「腸上皮化生」が起こります。これらの変化は胃内視鏡検査では比較的容易に確認できます。
胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が大きく傷ついた状態です。鎮痛剤の過量服用やストレスなどで起こることもありますが、ほとんどがヘリコバクター・ピロリ菌感染を原因として起こります。
心窩部痛(みぞおちの痛み)や背部痛、食欲不振などの症状を伴い、出血や粘膜が深く掘れてしまうことにより穿孔(胃や十二指腸の壁に穴が開くこと)の原因にもなり、入院治療や手術が必要になることもあります。
胃酸の分泌を抑制する薬などで治癒することはできますが、ヘリコバクター・ピロリ菌が原因である場合には、その除菌治療を行わない限り高い確率で再発します。
胃がん
1994年、WHO(世界保健機関)は、ヘリコバクター・ピロリ菌を「確実な発がん因子」と認めています。タバコやアスベストと同じように、確実な発がん物質と認定されたということです。
ヘリコバクター・ピロリ菌が長期にわたって胃の中に存在することにより、慢性胃炎を経て、胃がんの発生が起こると言われています。
その他の病気
上記以外でヘリコバクター・ピロリ菌が関係する疾患は、胃粘膜のリンパ組織に発生する「胃MALTリンパ腫」、血液疾患の「特発性血小板減少性紫斑病」、「過形成ポリープ」などが挙げられます。
また、慢性蕁麻疹、鉄欠乏性貧血なども、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療によって改善されたという報告があります。
ヘリコバクター・ピロリ菌の検査方法
尿素呼気試験
ヘリコバクター・ピロリ菌の有無を確認する検査として最も精度の高い方法です。
検査用のお薬を服用して頂き、臥位、坐位の姿勢をとりながら計2回、呼気バックに息を吹いて頂きます。
検査に要する時間は20分程度です。
迅速ウレアーゼ法
迅速ウレアーゼ法胃カメラ検査の際に、同時に行う検査法です。胃から採取した組織を検体として使用し、ヘリコバクター・ピロリ菌の活性を確認します。ヘリコバクター・ピロリ菌の有無を内視鏡検査と同時に、その場で確認できる検査法です。
培養法
胃カメラ検査の際に、同時に行う検査法です。胃から採取した組織を培養し、ヘリコバクター・ピロリ菌の有無を確認します。
抗体法・抗原法
血液抗体測定、尿中抗体測定、便中抗原測定などにより、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染の有無を検査します。
鏡顕法
胃カメラ検査の際に、同時に行う検査法です。胃から採取した組織を染色し、顕微鏡によって感染の有無を確認します。
※ヘリコバクター・ピロリ菌の検査は同時に行った内視鏡検査で胃炎(または胃炎の疑い)が認められた場合にのみ保険適応となります。
ヘリコバクター・ピロリ菌の検査単独の場合、保険は適用されませんので、ご注意下さい。
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌方法
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が判明した場合、以下のような流れで、除菌治療を進めていきます。
一次除菌(保険適用)
2種類の抗生剤と、胃酸を抑える薬を使用します。
1日2回の服用を、7日間継続していただきます。約75~90%の方が一次除菌で除菌治療に成功します。除菌から約2ヵ月経過した後に除菌が成功したかどうかを確認するために尿素呼気試験を行います。
※後述のように一次除菌で除菌が成功せず二次除菌が必要となる場合がありますので、除菌後判定検査を必ず受けて下さい。
二次除菌(保険適用)
ピロリ菌の中には、除菌治療で使う抗生剤に耐性を持っている菌もあり、一次除菌が不成功となる場合があります。その際には、一次除菌で使用した抗生剤のうち一種類を変更して二次除菌治療を行います。
1日2回の服用を、7日間継続していただきます。一次除菌で失敗した患者さんのうちの約90%が、二次除菌で除菌治療に成功します。
三次除菌(※保険適用外)
三次除菌まで進むのは、全体の1~3%です。三次除菌以降の治療は保険適用外(自費)となります。効果的な除菌の方法がないために保険適用外となっているのではなく、一次除菌や二次除菌のように意見の一致した方法が決まっていないだけで、これまでに多施設で研究された結果、三次除菌以降の治療方法はたくさんあります。
二次除菌で治療不成功であったため治療を諦められていた方や、三次除菌治療が受けられずにお困りの方は、京都の京都今出川 金光内科・消化器内視鏡クリニックにご相談下さい。
ヘリコバクター・ピロリ除菌治療の
副作用
ヘリコバクター・ピロリ除菌治療では薬の副作用が出る場合があります。
抗生剤により下痢気味になる場合があります。軽度の下痢の場合には服薬を止めずに続けて下さい。
以下の症状があったら、服薬を一旦中断した上で速やかに担当医にご相談下さい。(服薬を中断したまま放置しないで下さい。)
- 強い腹痛を伴う重度の下痢症状
- 発熱
- 便が緩くなる
- 発疹
ヘリコバクター・ピロリ菌感染の治療、その後について
上記でご説明した通り、胃の中に潜むヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染は慢性の活動性胃炎を経て胃がんの発生原因となりますので、胃内視鏡検査の際の迅速ウレアーゼ検査(胃の粘膜を採取しヘリコバクター・ピロリ菌の活性を調べる検査)や健診、人間ドックなどの際に行われる抗ヘリコバクター・ピロリ抗体検査(血液検査)、尿素呼気試験(検査試薬服用前後の呼気でヘリコバクター・ピロリ菌の感染状況を調べる検査)により、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が明らかになった場合には、胃内視鏡検査での確認の後に除菌治療が行われます。その後の患者さんご自身による必要な対応についてご案内致します。
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が成功したかどうかの確認が必要です
除菌後一定期間(医療施設の方針によりますが、概ね1−2カ月後)の後、検査に影響を与える服薬のない状況下で除菌が成功したかどうかの確認が必要です。除菌治療に使用する抗生剤(菌をやっつける薬)に対する抵抗力を持っているヘリコバクター・ピロリ菌が一定の割合で存在します。
その際には治療に用いる抗生剤を一剤変更した内容での二次除菌が必要になります。
(現在は二次除菌までの治療が保険適応です。二次除菌で除菌が成功しなかった場合には三次除菌や、場合により四次除菌治療が必要になりますが保険適応外の自費治療の扱いになります。)
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療を受けたものの、除菌が成功したかどうかの判定を受けずに長年放置している方がたくさん見受けられます。上述の理由で必ず除菌後の判定を受けて下さい。
ヘリコバクター・ピロリ菌関連胃炎と診断された事があるものの除菌治療を受けずに放置されている方は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染状態を再度確認した後の除菌治療が必要です。
以前に除菌治療を受け、除菌成功が確認できている方も内視鏡検査が必要です
除菌が成功すると胃がんの発生リスクは大幅に低下しますが、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していた間に形成された慢性胃炎の変化は残り続けます。そこから除菌後の発がんが一定の割合で起こり得ますので、年に一度の定期的な内視鏡検査が必要です。